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2017年2月 8日 (水)

車輪の下

節分も過ぎて、自然界は
すっかり春の準備にとりかかっています。
東京の空は青く澄み渡り、
夜になると一番星と月がキラキラ輝いています。

天国に旅立った母に声をかけますが
帰ってくる言葉は思い出の中に探すしかありません。

先日、30年余りひとり暮らしをしていた母の家で
遺品整理をしてきました。
そして、タンスの奥に見つけた
黄色くなった一枚の新聞記事
“私に友達を贈った一冊”

父から山本有三著の「路傍の石」をプレゼントされたのは
私が13歳の時です。
それをきっかけに、日本文学全集、世界文学全集と
立て続けに夢中で読み始めました。

私は、本に登場する主人公と仲良くなり
次から次へと沢山の新しい友達ができたものです。

友達はまだ10代の私に未知の世界を
教えてくれ、見せてくれました。

嬉しかったり、悲しかったり、
人生にさまざまな喜怒哀楽があることを
知ったのも、本によってです。

ヘルマン・ヘッセの“車輪の下”は
特に印象的な一冊でした。

その中で、校長先生が勉強しなくなった
主人公ハンスに
― きみ、決して弱気にならないことだ。
さもないと車にひかれてしまうよ ―
と注意します。
ハンスは感受性の鋭い子で
心が揺れ動いていたのです。

私は、弱いということはとても大切だと思います。
人は強さと弱さを持って生まれ、
そのバランスを取りながら生きていくのだと思います。

おとなは子供に弱さとどう付き合うかを
教えなくてはならないのです。

ひとりぼっちのハンスは、弱い部分を理解されず
死へと旅立ってしまいます。

私もハンスと同じ、ちょっとしたことでも感じやすく
弱い部分もありましたが
家族や刺繍のおかげで強さとのバランスを
とれるようになりました。

(1992年3月11日 毎日新聞より)

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